先日のフランステロの犠牲者の
家族がつづった文章に、
世界中に共感が広がっているという。
金曜の夜、君たちは素晴らしい人の命を奪った。
私の最愛の人であり、息子の母親だった。
でも君たちを憎むつもりはない。
君たちが誰かも知らないし、知りたくもない。
君たちは死んだ魂だ。
君たちは、神の名において無差別な殺戮(さつりく)をした。
もし神が自らの姿に似せて我々人間をつくったのだとしたら、
妻の体に撃ち込まれた銃弾の一つ一つは神の心の傷となっているだろう。だから、決して君たちに憎しみという贈り物はあげない。
君たちの望み通りに怒りで応じることは、君たちと同じ無知に屈することになる。
君たちは、私が恐れ、隣人を疑いの目で見つめ、
安全のために自由を犠牲にすることを望んだ。
だが君たちの負けだ。
(私という)プレーヤーはまだここにいる。今朝、ついに妻と再会した。
何日も待ち続けた末に。
彼女は金曜の夜に出かけた時のまま、
そして私が恋に落ちた12年以上前と同じように美しかった。
もちろん悲しみに打ちのめされている。
君たちの小さな勝利を認めよう。
でもそれはごくわずかな時間だけだ。
妻はいつも私たちとともにあり、再び巡り合うだろう。
君たちが決してたどり着けない自由な魂たちの天国で。私と息子は2人になった。
でも世界中の軍隊よりも強い。
そして君たちのために割く時間はこれ以上ない。
昼寝から目覚めたメルビルのところに行かなければいけない。
彼は生後17カ月で、
いつものようにおやつを食べ、私たちはいつものように遊ぶ。
そして幼い彼の人生が幸せで自由であり続けることが君たちを辱めるだろう。
彼の憎しみを勝ち取ることもないのだから。
<引用:朝日新聞デジタル「テロで妻を失ったレリスさんのメッセージ和訳全文」>
書いたのはフランス人の映画ジャーナリスト、
アントワーヌ・レリスさん。
大切な人がこのような形で突然奪われたとき。
悲しみ、怒り、やるせなさ、犯人への憎しみ…
当事者でなければわからない
いろんな感情が渦巻くはずだ。
憎んで当然の状況で
その感情を押し殺すのではなく
超越していった彼の姿勢は、
決して負けたのではない。
憎しみの連鎖を止めるのは
簡単ではない。
たとえ死者が生き返らないことがわかっていても、
感情的にはやられたらやり返すほうが
まだ落ち着く。
許すことの方がつらいと思う。
でも本当は、
憎み続けることの方がずっとつらい。
憎しみに囚われ、
負の感情を抱き続けて生きていかねばならない。
負の感情を抱いて生きるのは、
思っているよりずっとツライことだ。
許すことでしか、
憎しみから逃れられない。
囚われる負の感情から逃れられない。
結局、彼は憎しみを断ち切ることで
「勝利」を得たのだ。
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